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『海と毒薬』読書会の感想

遅ればせながら…

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読書会の感想です。

海と毒薬を読んで

なんともとっかかりにくい小説だった。

あの知る人は知る有名な事件、戦中、アメリカ兵の捕虜を九州大医学部が人体実験した事件がモチーフとなっているからだ。

思わず読むのを何度となくためらった。怖かったからだ。       

ただ読み始めるとびっくりするくらいに話に引き込まれてゆく。(人にもよると思う)

あまり描くとネタバレになるので割愛する。

あとがきにも書かれているが、この物語は良心の呵責について問うたものであると思う。

私が実際小説の人物の立場に立ったらどうなのか。冷静でいられただろうか、きっとこの登場人物に近い感覚なのか...など想像させられる部分が多々あった。

戦後太宰治の斜陽が流行ったのも頷ける。

また私たち日本人は宗教に対しておおよその人が無関心である。初詣は神社に、結婚式は教会、などなど寛容なようでまるで一貫性がないことをあまり不思議に思わず過ごしている。あえて言うならば日本人は神道なのであろう。

実際遠藤周作は敬虔なクリスチャンであったため他の作品でもそのことを引き合いに出している作品が多いらしい。物語の中でもクリスチャンらしい発想のセリフの部分が垣間見える。

それだけを考えるとなんとも敬遠しがちになりそうだが、そこは食わず嫌いだと思う。もし読んでない方がいれば一度読んでみてほしい。